奇跡





奴のジンクスからの通信が途絶えた時から、動悸が激しい。

いつも、何があっても帰ってくる奴が…。

 

今時分がどんな指示を下したかも思い出せなかった。

 

 

大切な日に堂々と遅刻した。

修正してやる為に殴った。

出会ったあの日から、すぐに懐いてきた。

 

あんな部下は初めてだった。

 

大きなことをしようとして、結局失敗して…

それでも、絶対に帰ってきたのに。

この間だって…。

 

 

「ピーリス少尉より入電。セルゲイ中佐が重傷を負っているとのことです。」

「…通信はそれだけか。」

「は、現在は他からの通信はありません。」

 

…私は、今何を期待したのだろうか…。

どうして、期待したのだろうか…。

ただの部下のはずなのに。

 

「ピーリス少尉等帰艦後、戦線を離脱する。」

「了解!」

 

そう、今は、余計なことを考えている時間はない。

 

「ピーリス少尉、セルゲイ中佐帰艦!!ただいまより戦線を離脱します!!」

 

そう、これでいいんだ…

これで、もう…

 

頭が痛くなるほどの大声も、聞かなくてすむ。

 

あの人懐っこい笑顔も

もう、見ることもない。

 

「離脱、開―」

「マネキン大佐!!」

「どうした?」

「所属不明のモビルスーツを発見しました!現在所属確認中…」

 

もしかして…?

 

「所属、AEU…パトリック・コーラサワー少尉のジンクスです!!」

「…なん、だと?」

「間違いありません!!…しかし…」

 

目の前に映し出された一機のジンクスは、上半身部分がそっくりなくなっていた。

 

『――さぁ…』

「?!」

『大佐ぁ…』

 

ジンクスからの通信。

聞こえたのは、かすれた、でも、きちんと声になった、奴の…

知らないうちに体が動いた。

奴のジンクスを映した画面の前で、叫んでいた。

 

「パトリック!!?」

『…へへ、また…』

「え?」

『また、やられちゃい、ましたぁ…』

 

なんで…

諦めた瞬間に現れるんだ、こいつは…

 

「…直ちにジンクスを回収しろ。」

「は!!」

 

 

 

ジンクスを回収し戦線を離脱。

無事に基地に到着した艦の中を歩いていると、出入り口で救護班が怪我人を運び出していた。

重症だと聞いていたセルゲイ中佐には、ピーリス少尉が付きっ切りだったので、遠くから様子を伺った。

どうやら無事なようで、意識もしっかりしていた。

 

自分の指揮で、これだけ多くの人間が負傷したのかと思うと、あまりに不甲斐ない。

 

「痛て!!おい!!もっと丁寧に運んでくれよ!!」

 

この場に相応しくない大声が響く。

あぁ、奴だ。

通信ではかすれていたのに、もうこんな大声をあげているのか。

 

「あ!!!!た、大佐ぁ!!」

 

奴は…パトリックは、私を見つけるなり大声で叫んだ。

 

「すいませんでしたぁ〜。今度こそもっと―?!」

 

周囲の人間の動きが止まる。

私の手が、パトリックの頬に平手打ちを食らわせていた。

 

初めて会った、あの時のように……。

 

「た、大佐…?」

「…もの…」

「え?」

「この大馬鹿者!!」

 

目を白黒させたパトリック。

どうして、こんな風にしてしまうんだろう。

 

「もう…心配、かけるんじゃない…。」

「大佐…」

 

本当は、ただ、心配したんだって、伝えたいだけで、

なのに、どうしてこんな態度で…

 

「…大佐。」

「なんだ。」

「ありがとうございます。」

「…殴られて礼を言う奴がいるか。」

「へへ、それもそうですね!」

 

それでも笑うから。

笑ってくれるから…

 

「本当に、ほっとけないな、君は…」

 

もう少しこいつといたら、何か変われるかもしれない。

だから、

もう少し、この馬鹿と付き合ってみてもいい、かもしれない。

 

 

END

 

 

 

あとがき

 

初めての00作品となります。

久しぶりに打ちました。だいぶ書き方を忘れていました。

コーラが25話でEDのみの出演だったのがちょい不満でしたが…

コーラ、こっそり外伝できちんと生存確認されたらしく!!すげー、コーラ、ちゃっかし外伝に出演!笑)さすがコーラだ!!

さて、00ではバリバリ大佐にお熱です☆

ショートカットじゃなかったけど!!軍帽が似合う上司!!!!

男の部下を引き連れる女上司萌え〜!!!

その部下がデキル奴だろうが馬鹿な奴だろうが萌え!!

第二部もこの2人の活躍に期待しています。楽しみ!

次の00作品もきっとこの2人です。次はぜひともギャグにしたいです!!!

 

 

 

☆おまけ☆

 

数日後。

 

「大佐ぁ〜!!お見舞いに来てくれたんですか?!」

 

「お前が病院内で騒いでいないか、確認に来た。」

 

「大丈夫ですよぅ!」

 

「そうか、じゃあもう来なくていいかな…」

 

「そんな!!」

 

 

こんなんでおわり…。

 

 

 

 

 

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