2.あの日から浮かぶのはいつも決まって





ザフトの奇襲を受け、数日。

 

地球連合軍新鋭艦アークエンジェルは、宇宙を彷徨っていた。

しかも、民間人を乗せて。

クルーも明らかに足りない状態で。

 

それでも、ザフトの攻撃は容赦なかった。

 

3人の士官を除いて、全員が下士官。

学生まで使って動くこの艦は、果たしていつまでもつのだろうか…

 

 

「はぁ…」

「大丈夫か?さっきから溜息ばっかりだぞ、お前」

 

成り行きでこの艦に乗艦しているフラガ大尉。

この人は誰彼構わず話しかける。そこが気さくでいいのだが…

 

「いえ、ちょっと疲れが溜まってるだけです。」

「だよなぁ、操舵士はお前しかいないからな。ここしばらくブリッジ詰めだったんだろ?」

「はい。…連続20時間勤務です。」

 

俺の言葉に大尉はオーバーリアクションをとる。

 

「マジかよ?!1日詰めてんのか?戦闘なかったのに?」

「しかたありませんよ。優秀とはいえ学生だけに任せるわけにいかんでしょう」

「それはそうだけどさ…」

 

どうにもならない状況。口で発散するしかない。

 

「それにしてもよくやるなぁ。」

「やらなきゃいけませんから。」

 

溜息をもうひとつ。

 

「ま、そうだよな…しっかり休めよ、お前が倒れたら洒落にならないからな。」

「はい。」

 

少ない休憩だ。部屋に戻って休むことにした。

 

 

「ノイマン曹長。」

 

凛とした声が廊下に響く。

癖になったのか、つい、溜息を吐いて振り返る。

 

「なんでしょうか…」

 

そこにいたのは、案の定、バジルール少尉だった。

 

「先ほどのデータだが、艦長から許可が下りた。次のシフトの時にデータを書き換えてくれ。」

「わかりました。」

「…疲れているな。」

 

さっきの溜息を聞かれたのか、少尉がぼそっと呟く。

 

「え?…あ、まぁ…」

「すまないな、少しは休ませてやりたいんだが…」

「こんな状況です。全員同じですよ。自分は大丈夫ですから。」

 

俯き気味な顔は無表情だった。疲れがにじみ出た、うっすらと青い顔。

 

「ちゃんと休めよ。」

「…少尉も、休憩中に仕事なんてしないで、休んでください。」

「…どうかな?まぁ、ちゃんと休むよう努力はしてみよう。」

 

お互いに背を向け、部屋に戻った。

 

 

ふと、あのシャフトでの出来事を思い出す。

あの時に見せたあの表情が甦る。

この艦に乗っている者は誰一人見たことのないであろう、あの姿を。

 

あの日からつい彼女を目で追ってしまう。

いや、以前から気にはなっていたのだが…更に、だ。

ブリッジに入ってくる姿も、廊下ですれ違った後の後姿も、何気ない会話の時の表情も、あの時とは違う。

 

 

部屋に帰れば、彼女の涙ばかり、浮かんでくる。

 

今日も、部屋で一人、不安を抱えたまま休むのだろうか。

 

また、自分にあの表情を見せてはくれないだろうか。

 

こんなに疲れているのに、そんなことばかり考えてしまうのは、何故だろうか。

 

本当に休めないのは、自分の方かもしれない…。

 

 

 

続く。…これは、お題とあってるんでしょうか?いろいろツッコみたいとは思いますが、どうかご勘弁を!!

ノイマン、ナタルのこと大好きですね?!

この続きをはたして次のお題で消化できるのだろうか…??

 

 

 

 

 

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