春期の疑問





「ううぅぅぅ…」

 

副操舵席からなにやらうめき声がする…。

 

「どうしたの?トール」

 

後ろにいたカズイが近寄る。

うめき声の主のトールはぐったりしていた。

 

「どうした?」

 

さらに後ろからナタルがやってきた。

 

「なんかトールが苦しそうです」

 

ちょっぴりビクつきながら答えるカズイ。

 

「…おい、ケーニヒ、どうした?」

 

トールの顔を覗くと、彼は唸りながらナタルにもたれかかる。

 

「!?お、おい?!」

「中尉…お、お腹が…」

 

すっかりナタルにすがりつき、瞳をウルウルさせている。

 

「大丈夫か?すぐ医務室に…」

「一人じゃ行けませぇん」

 

立ち上がらせてもトールはナタルにしがみついたまま…。

しかたなくナタルがそのまま連れて行くことになった。

 

 

医務室に行くと軍医の姿はなく、かわりに休憩中のサイと、戦闘待機のないキラがいた。

 

「トール!」

 

二人は驚きの声を上げ、ナタルに支えられたトールに歩み寄った。

 

「ちょうど良かった。こいつを頼む。今ブリッジに士官がいないんだ。…まぁ交代でノイマン少尉が戻ってるかもしれないがな。」

「わかりました。ご苦労様です、中尉」

 

キラがトールをベッドに寝かせ、サイはナタルに敬礼をした。

ナタルは敬礼を返し、そのまま医務室を後にした。

 

 

「…中尉、いなくなったよ。」

 

ナタルを見送り、その姿が見えなくなったのを確認すると、なにやら医務室に向かって合図を送るサイ。

その合図と同時に、先ほどまでうめいていたトールが起き上がった。

 

「ふあぁぁぁ〜、バレると思ったぁ!!」

 

実に生き生きとした伸びを披露するトールに、ドアをしっかり閉めたサイが息を吐く。

 

「ホントに実行しちゃうんだもんなぁ」

「いやー、緊張したよ。寿命縮んだかも…」

「ご苦労様トール!で、どうだった?どうだった??」

 

なにやら目を輝かせるキラ。

トールは口に手を当ててにやにや笑う。

 

「見た目以上だね、絶対!!」

「ま、マジ?!」

「うわーいいなぁー!僕がやればよかった!」

 

楽しそうに談話していると、いきなり医務室のドアが開く。

 

『!!???』

「…あれぇ?具合悪いんじゃなかったのぉ?トール・ケーニヒ二等兵?」

 

顔を出したのは、青ざめたカズイに、フラガであった。

 

「しょ、少佐!!??」

「…どういうことだい?まぁみんな休憩中だし、倒れた本人もあと2分で交代だったみたいだから、サボりじゃないんだろうけど…」

 

にやにやするフラガを相手に、少年たちはごまかす術が思いつかなかった。

 

「…カズイ…」

「ごめん、ついトールが倒れたから見に行くって言っちゃって…」

 

三人からの非難の視線に、カズイは泣きそうな顔で告白した。

 

「お〜いおい、俺は別に怒ってねぇぞ?世の少年少女の味方さ。…まぁ、理由は聞かせてくれよな?」

 

そんなフラガの話術に勝てるはずも無く、彼らはすべてを話すことにした。

 

 

「この間、みんなで言ってたんですよ。」

 

最初に口を開いたのは、倒れた本人のトールだった。

 

「艦長って、見た目からして胸おっきいじゃないですか…」

「あ〜、そうだねぇ。…やっぱ目ぇいっちゃうよな。」

 

愛しのマリューの姿を頭で瞬時に描き、変な笑いを浮かべるフラガ。

 

「で、あの中尉はどうなんだろう?って話になったんですよ。」

 

そんなフラガを無視してサイが続く。キラとカズイは黙って頷いていた。

 

「あ〜?中尉殿ねぇ…小ぶりだろ、どうみても。」

 

今度はさして興味を示さないフラガである。

しかし、トールはいきなり立ち上がり、フラガに向かってビシッと指をさした。

 

「甘いですよ、少佐!!」

「な、なんだよ…」

 

その勢いに、エンデュミオンの鷹もたじたじだ。

トールの言葉に頷き、キラも口を開く。

 

「やっぱり見た目じゃわからないんですよ!ミリアリアだってああみえて結構…」

「キラァァァ!!!」

 

トールはベッドから飛び降りてキラのみぞおちに拳を入れる。

 

「うぐふっっ!!!」

「今はバジルール中尉の話をしてるんだよ!」

「へぇ、ミリアリアちゃんて、結構でかいの?」

「しょーーーーーさっ!!」

 

こういう話に自分の彼女がでるのは誰だって嫌なものである。

トールはその勢いのまま言葉を続けた。

 

「見てじゃわからないなら、もう行動に移すしかないじゃないですか!!」

 

少年の唐突な言葉にフラガの顔が青くなった。

 

「お、おいおい!お前ら!!いくら未成年でもその年じゃ犯罪だぞ?!」

「…?犯罪??」

「え?だって行動って…実際に触るか、着替えだのシャワーだの覗くかだろ?」

 

フラガの恥ずかしい勘違いに、思春期真っ盛りの一同は顔を真っ赤に染める。

 

「そ、そんな思い切ったことするわけないじゃないですか!」

「そうですよ、少佐じゃあるまいし…」

 

さっきから一言多いキラ君。

 

「い、いつ俺がそんなことを…?!」

「え〜〜、いつも触ってるじゃないですか、艦長に。」

「あ、俺も聞いた!艦長がバジルール中尉に相談してたって、ミリアリアに。」

「うっそ、マジかよ!!!?……いや、今はそんなこと関係ない!!!」

 

少年たちの声に頭を抱える。が、首を振って強引に話を元に戻す。

 

「…そうですね。まぁ流石にそんな犯罪行為なんてできませんから、こう、ごく自然に接触する方法を考えたんです。」

「それが、今回の、『中尉に支えられて医務室へ!』作戦です!」

 

かなりそのままなネーミングに突っ込みたかったが、あえてスルーするフラガ。

 

「へぇ、中尉が運んできたのか…」

「はい!艦長が休憩に出て、中尉がCICから上がってきたのを見計らい、カズイが中尉を誘導して…すでに休憩中のサイとキラが医務室の見張りして。

…あ、もちろんみんなの休憩時間とかちゃんと考慮しての作戦です!!」

 

あまりにも計算し尽された作戦に、フラガは度肝を抜かれていた。

 

「は、ははは…、そうか…で?収穫は?」

「ばっっっちりです☆」

 

トールはフラガばりのさわやかウインクをとばす。

 

「中尉、普段はおっかないけど、すっごく優しかった…!」

「…いや、収穫って、そうじゃないだろ?」

 

やはり興味なさ気に言う。早く本題に入ってほしいようだ。

しかしトールの語りはとまらない。

 

「いや〜、こう、なんていうか…すげーいい匂いとかして、手もスベスベでぇ…」

「ホントかよ!!」

「知ってる!俺CICにいるから…。なんていうか、すごい甘い香が…」

「うらやましーー!僕もブリッジ行きたいなぁ。」

 

勝手に盛り上がる思春期の少年たち。

 

(普段はおっかねーとか言ってるくせに…)

 

やっぱり子供だなぁ、と思うフラガ。

 

「本題に戻ろうぜ。で?胸はどうだったんだ?」

「推定Cカップ以上!!」

「なんだよ、やっぱ大したこと…」

「フラガ少佐は基準が艦長だからでしょ?!」

 

一気に非難の声が集中する。

 

「それに、胸は大きさだけじゃない!形も大事です!!」

「中尉は美乳…?」

「ああ、美乳だね!!」

「たしかにこう、しっかり張ってて…」

 

いつの間にか変な方向へ話が逸れている。

 

(こ、こいつら…ただのガキじゃない?!)

 

盛り上がる一方の彼らの会話を黙って聞いていると、新たな疑問にぶつかっていた。

 

「…そういやさ、この作戦練ってる間に、中尉の胸おっきくなってなかった?」

「ああ、そういえば…」

 

一体いつからこんな作戦練ってたんだ?とかどんだけ中尉の胸観察してるんだ?とか色々突っ込みたかったが、少年たちの疑問の方にフラガは食いついた。

 

「あぁ〜、それはあれだろ、ノイマンだろ。」

 

思いがけない答えに少年たちは動揺する。

 

「ノイマン少尉?」

「も、もしかして…あの二人がいい仲って話、本当なんですか?!」

「なんだその話!俺聞いたことないぞ?!」

 

少年たちの反応に、フラガは不敵な笑みを浮かべた。

 

「それがさぁ、ホントのホントなわけ!こないだノイマンが中尉の部屋から出てきたの目撃されてさ、どうも一緒の休憩時間はどっちかの部屋にいるみたいだぜ?」

 

勝手に暴露するフラガ。しかし少年たちも真剣だ。

 

「はぁぁ〜、そうなんだぁ…」

「俺は少尉が中尉のこと好きだったのはなんとなく知ってたよ。中尉がブリッジ上がってくると絶対振り返るんだもん、少尉」

 

トールも勝手に暴露している。

 

「あ、じゃあさ、少尉に聞けばいいんじゃない?ナタルさんのバストサイズ!」

 

キラが名案を言う。(…こいつはなぜかナタルを階級呼びしない。)

しかし、フラガはやれやれと言わんばかりに首を振る。

 

「あのねぇ、あの堅物君が自分の女のバストサイズなんて素直に教えてくれると思う?」

「そうですね、絶対教えませんね。」

『!!!!!?????』

 

突然降りかかる、さっきまでなかった声…

恐る恐る振り返り声の主を確認すると、一同は青ざめた。

 

「こ、こここれはノイマン少尉〜!い、いけないなぁ、職務中に持ち場を離れるんなんて!」

 

恐怖で声が出ない少年たちの代わりにフラガが誤魔化す。

しかしノイマンは表情を変えず、にっこり笑いながら答える。

 

「中尉に、ケーニヒの様子を見に行けって言われましてね。」

「だ、だって…じゃぁ、今誰が操舵席座ってんの?」

「トノムラ」

「へ?大丈夫なの?それ…」

 

そんな質問も、この男はさらりと返す。

 

「あいつ、もともとはコ・パイなんで平気ですよ。この仮病使って中尉に抱きつきやがったガキに任せるよりよっぽどマシです」

 

さりげなくひどいことを言う。…よく見ると、こめかみに血管が浮き出ている。

 

「い、いつからいたの?」

「『中尉に支えられて医務室へ!』作戦あたりからです。」

 

《ぜ、全部聞かれてるーーーー?!?!》

 

「安心してください。中尉にだけは言わないでおきますから。」

 

この瞬間、全員が死を覚悟した。

 

 

次の日、フラガを含む五人は、廊下・トイレ・食堂・シャワー室・格納庫等、艦内のあらゆるところで掃除をしている姿が目撃された。

 

 

END

 

 

 

あとがき

 

少年とムウメインのギャグでした!ここまではっきりと『ギャグ』といえるものを書いたのは初めてかもしれません!

…しかし、かなりひどいですね。すいません。

時間軸不明です。昇進してるけど、キラとサイがもめている様子はなく…

まぁ、細かいところは気にしないでおきましょう!(汗/逃)

お約束ですが、ノイマンとナタルはデキてる設定。(笑)

微妙な下ネタ満載!作中での熱い『胸』トークは、私がよく親しい友人に力説しているものです。

胸は美しさが重要!!!(壊)

あ、私の勝手な推測ですが…

マリュー:FGカップ、フレイ:DEカップ、ナタル:CDカップ、ミリィ:Cカップ、です。

フレイとナタルは、絶対美乳!!!(力)

………ほんと、勝手な推測なんで気にしないでください…。

 

 

 

☆おまけ☆

 

「ナタル、胸大きくなった?」

「え!!??わ、わかるか?ちょっと下着がきつくなったんだが…///」

「ええ、まぁ…(…あいつら、ホントどんだけナタルの胸観察してたんだ?)」

 

ちゃっかり確認するノイマンであった。

 

 

…お前が気付かなくてどーする!!!

 

 

 

 

 

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