居場所
新鋭艦の艦長になって数日。
個性的な乗組員数名のせい(だと思う)で、胃痛に悩まされるようになった。
「で?お前達は何をしにここに来たんだ?」
今まさに目の前にいる問題児3人。ここは艦長室。
『別に〜?』
声が揃った。
普段は喧嘩ばかりしている(ように見える)彼らは、各々趣味に興じているにもかかわらずすごいチームワークを発揮する。
「あのなぁ、ここは艦長室だぞ?用もないのに居座る場所じゃない!」
「別に邪魔してないし、いいじゃん?」
ゲームをしていたブエル少尉が手を動かしたまま口答えする。
「あ〜、コレ読み終わっちった。」
「ZZZ…」
サブナック少尉は聞いてすらいない。更にアンドラス少尉は寝ている。
そろそろ限界だった。
「いい加減にしろ!!自室に戻れっ!!」
ついに爆発してしまった。でも、理由もなく居座られるのは腹が立つのだ。
「…ちぇ、わぁったよ。」
「…おい、シャニ。行くぞ!」
ブエル少尉がつまらなさそうにはき捨てる。サブナック少尉はアンドラス少尉を引きずって出ていった。
「ふぅ……」
静かになった艦長室。大きく息を吐き、背伸びをする。
「!っと…。」
ふと机から数枚の書類が落ちた。
すぐに拾い上げようとすると、目に入る書類上の文字。
あの3人のデータがまとまっている書類だった。
書類を拾い上げ、1枚1枚順番に目を通す。
3人別々になっているが、書いてあることになんら変わりはなく…
ふと思い出した。
「個人データ末梢、か。」
彼らは生体CPU。
望んだわけでもないのに過去も家族も末梢された、人間としても扱われることない生きもの。
「そんなの、辛すぎる。」
気付いたときには、私は部屋を出ていた。
「シャニ、そこのジュースとって。」
「うざい」
「てめぇ寝てるだけだろ?!俺今いーとこなんだよ!滅殺!!」
「うっせぇんだよ、お前ら!」
部屋の近くまで行くと、こんな会話が聞こえてきた。
まったく…どうして場所が違うだけでこうなるんだか…
…そうか、私の部屋だったから、静かにしていたんだ、彼らは…
「うるさいぞ3人!」
私の声にびっくりしたのか、3人は一斉に扉の方を見た。
「…なんだよ。別にいいだろ?俺達の部屋なんだから。」
「艦長室にまではきこえないだろ?」
サブナック少尉とブエル少尉がそろって口答えする。
まったく、可愛くないやつらだ。でも…
「他の者に迷惑だ。こんなに騒ぐのなら…私の部屋に戻れ!」
3人の目が見開かれているのがわかった。
「…私の部屋では静かにしていただろう?さっさと来い!」
3人はしばらく動かなかったが、アンドラス少尉が黙って立ち上がった。
「艦長室のソファ、ここのベッドより寝心地いいし。」
アンドラス少尉につられるかのように、他の2人も黙って立ち上がった。
「…これから、私がいる時のみ入室を許可する。いいな?」
「へ〜い。」
アンドラス少尉が気のない返事をする。でも、なんとなく嬉しそうに聞こえた。
「つーか、いない時にいても意味ないし。」
「まあね〜。」
…そうか、彼らはきっと…
「…さぁ、では早速だが、お茶にでもしようとしてたんだ。付き合ってもらうぞ?」
彼らはきっと、誰かが迎えてくれる場所が欲しかったんだ…。
「俺、オレンジジュースぅ!」
「んじゃ、オレ、コーラ。」
「コーヒー。ブラックで。」
「カッコつけんなよ、オルガ。」
「オレンジジュースはガキくせえよ。」
「クロトガキだし。」
「てめぇらぁ!!おい、シャニ!炭酸ばっか飲んでっと骨溶けんだぜ?お前の骨なんて瞬殺!!」
「あ〜もぅ!騒ぐなと言っただろ!?食堂に寄るから、各自で勝手に好きなものを持って行け!!」
『へ〜い。』
うるさくて我侭な奴らだが、こうして生き生きとしてる3人を見ると、嬉しくなる。
もしも、自分が3人にとって特別な存在なのなら…出来るだけのことをしよう。
かつての仲間と争うのは辛い。でも、私にはここで守るべき者を守るために生きよう。
そう、この、騒がしく、寂しがりやな『仲間たち』を守るために…。
END
あとがき
初ドミニオン小説です!!い〜ですね、3人は書いてて楽しかったです☆
ふと、連休明け初日の登校中にドミニオンネタが浮かび、ケータイでポチポチ打ち始めました。
帰りは電池切れで打てなかったんですが、帰宅後スラスラ打って、完成。
短いってのもありますが、キレイに書けたかもしれません。
クロトはオレンジジュースって感じがします。他の2人よりお子様♪かわいーなぁおい!!
オルガは他の2人より大人なイメージがあったのでコーヒーとかにしてみました。
普段は落ち着いてるし…でもちょっと意地っ張り?
シャニは中間。他の2人より素直です。意地を張らないというか…。
コーラにしたのは、クロトの「お前の骨なんて瞬殺!」を言わせたかったっていうのもあります…。
全体的に会話の多い話になりましたが、これでいいと…思います。きっと。
なんだか自分の中のイメージが強くなってしまったので、「こんなの3人じゃない!」という方もいらっしゃると思いますが…大目に見てください…。
☆おまけ☆
…数日後…
「ここは動物園ですか、それともジャングルですかねぇ?」
「…艦長室と書いてあるでしょう?」
アズラエル理事の命令で拾った救命ポットにはフレイ・アルスターがいた。
心細いだろうと、この部屋にいることを許したのだが…。
「ちょっとぉ!!あんたなんで1人でソファ占領してんのよ!どきなさいよ!!」
「ZZZ…」
「起きなさいよぉ!!」
「うっさいんですけどぉ〜」
「なんですって?!この寝てる奴の聴いてる音楽の方がうるさいわよ!」
「キーキー喚くな、艦長に迷惑だろ?」
「…わかったわよ…。」
…あれから3人は本当に素直になった。私の言うとおり、ここにいる時は静かにしている。
自分たちで進んで差し入れを用意してくれるようになった。
心を開いてくれたのだろうか…とても嬉しかった。
「おやおや、ずいぶん懐かれているんですねぇ?」
「えぇ、彼らはいい子ですよ。」
第3者からこう言われると、なんだか誇らしい。
「!!おいてめぇ〜!人の本踏んでんじゃねぇよ!!」
「あらごめんなさ〜い?でもぉ、床に放置する方もいけないんじゃないかしらぁ?」
「んだとコラァ!!」
「ウザイんですけど〜。」
……。
「うるさいぞ4人!!静かにしろぉ!!!」
『は〜い。×4』
「ははは、母親というか…動物園の園長って感じですね?」
「…なんとでも言ってください…。」
「では父親として一緒に面倒みましょうか?」
「結構です!」
やっぱり私は艦長に向いていないのかもしれません、ラミアス少佐…。
なんだか、一家ですね。ドミニオン家ですか?