存在





戦闘配備が解除されて数時間。

休憩のトノムラは、食堂で一人寂しく食事をしていた。

 

他の下士官はシフト中、近くにいるのはトールとミリアリア。

二人の時間を邪魔するわけにもいかず、さっさと済ませて部屋に行こうと、プレートを持ってガツガツ食べていると、突然話しかけられた。

 

「あのー、トノムラ伍長〜、ノイマン曹長って、いつもバジルール少尉にくっついてますよね?」

 

言いながら、トールとミリアリアはこそこそとトノムラを囲うように座る。

 

「ん?なんだよ、いきなり。」

 

トノムラはプレートを置き、二人を交互に見る。

 

「いやぁ〜、なんだか、いい感じじゃないですか〜」

「そうそう!だからぁ、もしかしたらなんか特別な関係なのかなぁ?って思いまして。」

 

ミリアリアが愛らしい笑顔でトノムラに迫る。

トノムラはスプーンを咥えたまま困ったように頭を掻いた。

 

「う〜ん、ノイマンさんと俺は、少尉の直属の部下だから、この艦に乗る前から一緒に仕事してるけど…」

「あ、そうなんですか?」

「あぁ。…だからじゃないか?ノイマンさんは少尉と同い年だし、階級も近いから、話し相手として合うだろ?」

 

そこまで言うと、再びプレートを持つ。

しかし、二人は納得していないようだ。

 

「それだけじゃないですよね?曹長、少尉に気、ありますよね?」

 

ミリアリアの一言に、ぴたりと動きを止めるトノムラ。

 

「俺たち結構知ってますよ?」

 

さらにトールまでこんなことを言うものだから、トノムラは大きく溜息を吐いてしまった。

 

「いったい誰に聞いたんだよ、ったく。」

 

すると、二人は顔を見合わせにやりと笑った。

 

「やっぱりそうなんだ!」

「カマかけてみるものね〜☆」

「!!!!!?????お、お前らっ!!」

 

してやられたトノムラは頭を抱えて机に突っ伏した。

 

「あぁぁぁ!ノイマンさんに怒られる〜〜〜!!!」

「大丈夫ですよ!このことは誰にも言いませんから!!」

 

トールが馴れ馴れしく背中を叩くので、軽く睨むトノムラ。

 

「それにこれは、わかりやすいオーラを出してる曹長がいけないんですよ。」

 

ミリアリアの言葉に、今度は笑いがこみ上げてきた。

 

「ぷっ…まぁ、確かにな」

「俺がなんだって?」

 

三人は突然頭上から降ってきた声に真っ青になり、恐る恐る振り返る。

 

「ノイマン曹長………と、少尉…」

 

声の主はやはりノイマンで、その背後にはナタルが立っていた。

 

「お疲れ様です!!」

 

三人は思い出したように二人の上官に敬礼をする。

トノムラは顔がこわばった笑みを浮かべ、トールは少しそわそわしている。

しかしミリアリアだけは目を輝かせていた。

 

「あの〜、少尉と曹長って、よく一緒にいますよね?」

 

そう無邪気に言うと、隣の二人は真っ青になった。

そしてかなり動揺するノイマンの後ろで、ナタルは首を傾げてみせる。

 

「そうだな。というより、私が連れ回していることの方が多いが…」

 

ナタルの一言にミリアリアが食いつく。

 

「へぇぇ!!どうしてですか?」

 

男二人は真っ青のまま。ノイマンは口をぎゅっと結び、真剣にナタルを見つめている。

 

「ん?あぁ、ノイマンとは前から一緒だし、頼りにしているからな。」

 

そう言ってノイマンに微笑みかけるナタル。

ノイマンは顔を真っ赤にする。

ミリアリアは「なるほど」と呟き、何か閃いたのか、にっこり微笑んだ。

 

「ですよね!曹長って真面目でとっても頼れますよね!私、そんなところ好きですよ!!」

 

トールがなんだか複雑そうな顔をしているが、ミリアリアはそっとトールにウインクをする。

するとナタルも頷いて続ける。

 

「あぁ、私もノイマンのこと、好きだぞ。」

『へっっっ!?』

 

男三人が揃っておかしな声を上げた。

ノイマンはますます顔を赤く染める。

 

「…おっと!!ゆっくりしている暇はなかったな、ノイマン。早く書類を片付けて休もう。ではな。」

 

そう言って、ナタルは食堂をあとにした。

ノイマンは「はい!」と大きく返事をし、顔を緩めたままナタルの後を追った。

 

 

 

「あ、あの、少尉…さっきのことなんですが…」

「ん?どうした?」

 

廊下にて…ノイマンはもじもじしながらナタルに話しかけた。

 

「その…す、好きだって言うのは…」

「あぁ、私は努力を惜しまない人間は好きだぞ!そうだな…特に最近の子供たちの成長は目を見張るものがあるな!

特にハウとアーガイルは、わからないことがあるとちゃんと自分なりの考えを言ってから聞いてくるんだ!ああいう者たちは好きになれるな!!」

 

珍しく多弁なナタルに引きながら、小さく溜息を吐く。

 

「…やっぱそういうことか…」

「ん?どうした??」

「い、いいえ!!なんでもありません!!!」

 

慌てたようなノイマンの反応に首を傾げたが、すぐに笑顔を向けるナタル。

 

「私は本当にお前を信頼している。これからもよろしくたのむぞ、ノイマン曹長。」

「はっ!ありがとうございます!」

 

(ま、信頼してくれてるってわかっただけでも、いっか……)

 

がっかりしたものの、それなりに信頼されていることは嬉しかったノイマンだった。

 

 

 

「…あ〜、びっくりした…」

 

三人はまだ食堂で話をしていた。

 

「ミリィ、いきなりあんなこと言って!心臓に悪いよ。」

「う〜ん、ちょっと誘導してみたんだけどな〜…でも、あれって他意はないですよね?」

「だろうなぁ。ああいうのってタチ悪いよな。」

「ま、少尉らしいっていえばらしいですけど。」

「…たしかに。」

 

同時に溜息を吐く三人であった。

 

 

END

 

 

 

あとがき

 

久しぶりの執筆ということで、一応リハビリ作品です。

ノイナタの欄に置いているんですが、これって…ノイナタにしていいんでしょうか???

明らかにトノムラ・トール・ミリィの方がでてるんですが…。

しかもノイマン→ナタル…。すいません…m(_ _)m

ナタルの天然っぷりとノイマンのヘタレっぷりが増しました。

次こそ、もっとラブラブで、おまけにノイマンがカッコイイ作品を書きたいです!!

…頑張ろう…

 

 

 

☆おまけ☆

 

「ノイマン曹長〜〜!!」

「あ、フラガ大尉…」

「こないだ食堂の前通った時に聞いちゃったんだけど、副長さんに熱烈な告白されてたな!!」

「……ほっといてください。」

「あら?お〜いノイ―」

「大尉!」

「ん?トノムラ伍長?」

「…あれは少尉のニアミスです…。他意はないんですよ!!」

「………あらら〜…」

 

 

空気の読めない男、ムウ・ラ・フラガ……笑

 

 

 

 

 

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