第2話 打ち解け





ここは「私立コズミック幼稚園」。

今日も園児たちはみんな元気です!!

 

 

「…ちっ」

 

「??キラ、どうした?」

 

朝、先生たちの口から、ナタル先生が新しいクラスにいってしまったことが知れされました。

キラが小さく舌打ちをしたことを、隣にいたカガリは聞き逃しませんでした。

 

「え?あ、うん…。ナタル先生いなくなっちゃって寂しくなるね。」

「そうだな。でも、すぐそこにいるからいつでも会えるぞ?」

 

カガリはあくまで冷静に言いましたが、キラには大問題のようです。

 

(くそっ!まだナタル先生には抱きついてないのに!ますますチャンスがなくなったじゃないか!)

 

やっぱりそんな理由なのでした。

 

 

「コジローちゃん!今度私とジャッキー先生のお家作って!」

「待ってください。その前に私の特設ステージを…」

 

園児たちの遊び道具を作っている用務のマードック先生は、いつのまにかミリィとラクスに囲まれていました。

 

「ど、どっちも俺には無理でさぁね…」

 

マードック先生はマジで困っていました。

 

「なによぅ!あなたはこんなところで歌わないでしょ?」

「あらら、たまにはいいじゃないですか?」

 

ミリィはムッとして言いますが、ラクスはきょとんとしています。

 

「お、俺はそろそろ仕事でさぁ、またあとでな!」

 

言いあってる間に、マードック先生は逃げました。

 

「あー!コジローちゃん!」

 

逃げたマードック先生を追おうとしますが、後ろから声がします。

 

「ミリィちゃん、そろそろ教室いくよー!」

「ラクスちゃん、こんなところにいたんですか?」

「ジャッキー先生!あ、マーちゃん先生も…」

「まぁまぁ、探して下さっていたのですか?すみません〜」

 

ジャッキー先生とマーちゃんことマーチン先生は、教室にいない2人を探していたようです。

ミリィはいつものようにジャッキー先生に抱きつき、ラクスはマーチン先生に歩み寄ります。

 

「あのね、コジローちゃんに私と先生のお家作って言ったらね、逃げたのぉ!」

「そうかそうか。でもここは目立つから、いつか別のところに建ててもらおうね!」

 

怒っていたミリィはその一言ですぐに笑顔を取り戻しました。

 

「…マーチン先生?私のステージを…」

「い、行きますよ!!」

 

ジャッキー先生のように口がうまくないマーチン先生は、マードック先生のようにスタスタ逃げていきました。

 

 

「ナタルせんせぇ〜〜〜!」

 

新しい教室に向かおうと廊下を歩いていたナタル先生の背後から、元気な声と足音が聞こえてきました。

 

「クロトか?おはよう」

 

ナタル先生が振り向いた瞬間、クロトは勢いよく先生の胸に飛び込んできました。

 

「おはよう先生!今日は何するのぉ?」

 

クロトは持ち前の人懐っこい笑顔を先生に向けます。

そんな笑顔に、先生もつい笑顔になります。

 

「そうだなぁ…何がしたい?」

「一緒にゲームしよっ!!」

 

あくまで真面目に言いますが、そんなわけにもいきません。

 

「クロト、ゲームはお昼休みに教えてくれないか?先生全然わかんないから。」

「一緒にやってくれるの?!うん!教えてあげる!!」

 

今まで1人でやっていたクロトは、目を輝かせて頷きました。

ナタルはそのままクロトを抱き上げて教室に向かいました。

 

 

「ちょっとぉ、なんでナタル先生があんな奴らの担任なのよぅ!!」

 

実はナタル先生に懐いていたフレイは、不機嫌丸出しでノイマン先生に絡んでいました。

 

「そうですよ!!なんですかぁ?!」

 

色んな意味で納得いかないキラも参加します。

 

「あ、あのね…それはナタル先生が…」

 

2人のあまりの迫力に押され気味のノイマン先生。助けを求めるように同僚たちを見ますが、ここぞとばかりに目を逸らします。

 

「ミリィちゃん、あの公園の横にお家建てようね!でもあと10年後ね?」

「どうして??」

「女の子は16歳にならないと結婚できないんだよ!」

 

なんか妙にリアルなことを言うジャッキー先生。

 

「ジャッキー先生ぇぇぇ!!」

 

トールはまた泣いてしまいました。

 

「トール君、男の子は泣かない泣かない!」

 

チャンドラ先生はナタル先生の言葉をパクリながらノイマン先生の目から逃れようと必死です。

ノイマン先生はパル先生を探しますが、なぜかいません。

 

「ちゃっとぉ、聞いてるの?!アーニィ先生!!」

 

フレイは容赦なく迫ります。

 

「フレイ、仕方ないよ。またカガリやトールと喧嘩しちゃうかもしれないだろ?」

 

サイが宥めます。フレイは頬を膨らませますが、大人しくなりました。

 

「サイがそう言うなら…」

 

ノイマン先生はホッとしましたが、なんだか複雑な気分です。

 

(ナタル先生に担任を任されたのに、子供に助けられるなんて…。)

 

情けなくなって、同僚を責める気力も無くしてしまいました

 

 

「…オルガ、シャニ…、これから工作の時間なんだが…」

 

そのころ新クラス「ドミニオン組」の教室では、早速問題児と戦っているナタル先生がいました。

 

「お前らさぁ、ナタル先生の言うこと聞けよ!」

「ウザイ」

「むっかぁ!!シャニの馬鹿!必・殺!!」

「わぁぁぁ、やめろ、クロト!」

 

怒ったクロトがシャニに向かって石を投げようとしたのを、ナタル先生は慌てて抑えました。

 

「気持ちは嬉しいが、痛い思いをさせたらダメだと言ったろう?」

「…はぁ〜い…」

 

クロトは大人しく従い、そのまま先生にしがみ付きました。

 

「シャニ!昨日から気になってたが、そんなに大きな音で音楽を聴いていたら耳を悪くするぞ?!」

 

ナタル先生は工作は諦めたようですが、シャニの耳から聞こえる爆音については諦めませんでした。

 

「すぐに音を小さくしろ!」

「…命令聞かない。」

「命令じゃない!!耳を悪くしたらいけないから言ってるんだ!」

 

そう言って、ナタル先生は早速シャニの耳にまとわり付くイヤホンを引っこ抜きました。

 

「あ…」

「音楽を聴くのはもうかまわん。でも、こんな大きな音では許さん!!」

「ちょ…!!」

 

シャニはイヤホンを取り返そうとしましたが、先生の眼力があまりにも凄かったので、手が出なくなってしまいました。

 

「さて、次はオルガ、君だ。いい加減本をしまいなさい!本が好きなのはいいことだが、時間のけじめはつけてもらうぞ!!」

 

昨日やさっきまでの柔らかな雰囲気とはあまりにも違う様子だったので、オルガは黙って本を閉じました。

 

「…よし、いい子だな。さぁ、工作をしよう!」

 

ナタル先生はさわやかな笑顔で言いました。

 

(…怒らせないようにしよっ☆)

 

クロトは心の中で呟きました…。

 

 

・・・数十分後・・・

 

『………』

 

3人は、ナタル先生の周りを囲っていました。

ナタル先生は折り紙に奮闘しています。

 

(…これ、なんだよ…)

 

オルガは隣のクロトを肘で突きながら、小声で聞きました。

 

(…鶴じゃないかな?)

(!!??これが鶴に見えるか?!)

(他に何に見えるのさ?)

(…確かに、折る過程は鶴だったけど…)

 

《ナタル先生って…》

 

「先生、不器用だね。」

 

2人が心の中で思ったことを、シャニが声に出してしまいました。

 

「………」

 

先生は黙って俯いてしまいました。

 

(シャニの馬鹿!!)

(あ〜ぁ…しらねぇ…)

 

またさっきのように、怒るのでしょうか…3人はナタル先生を見つめます。

ナタル先生は…

 

「…鶴に、見えない、か?」

 

小さな声で呟いて、恐る恐る顔を上げます。

その顔は…恥ずかしかったのでしょう、見事に真っ赤でした。

 

(可愛い〜!)

(……///)

「先生、鶴には見えない…」

 

クロトとオルガはさっきまでの姿とのギャップに顔を赤くしましたが、シャニは相変わらずマイペースに言います。

 

「せ、先生!僕が教えてあげる!!」

「…俺もできる…」

「他のも折れるようにしようぜ。」

 

涙目になっていたナタル先生は、3人の提案に笑顔を取り戻したのでした。

 

 

「おい!すごいぞ!!」

 

その頃アークエンジェル組の先生方は、お昼寝の時間を使い、隣の小部屋で順番に休憩をとっていました。

 

「どうしたんだ?パル」(つーか、さっきはどこにいやがった?)

 

ノイマン先生は、慌てて駆け込んできたパル先生に平然を装って聞きました。

 

「ナタル先生、もうあの3人を手懐けたみたいですよ!」

 

「な、なにぃ?!」

 

ノイマン先生は思わず勢いよく立ち上がりました。

 

「今、3人が先生を囲って、一緒に折り紙やってるんです!」

「…あぁ、ナタル先生…やっぱり凄い方だっ!!」

 

頬を赤らめて、ノイマン先生はボーっとしてしまいました。

 

「…と、とりあえず見に行きます?」

「…はっ!!あ、あぁ!」

 

ノイマン先生は慌ててパル先生を追いました。

 

 

「先生!そうじゃなくて、ここ!ここをこうやって…」

「待てよ。その前にここ反さないと…」

「…先に折り目を入れた方が折りやすい…」

「すまん!わからなくなった!!」

『え〜〜?!』

 

2人の先生がドミニオン組に着くと、早速楽しそう?な声が聞こえてきます。

 

(…何してるんだ?)

 

ノイマン先生は首を傾げます。

 

(…なんか、ナタル先生の方が教わってるみたいですが。)

 

「この後どうするんだっけ?」

「え〜?!ま、まだそこぉ??」

「…先生、不器用すぎ…」

「…すまん…」

「あ〜、あのな、ここはこうやって…」

 

《た、楽しそう…》

 

4人のやり取りを、覗く2人の先生は少し羨ましそうに眺めていました。

 

 

「やっとできた〜!」

「…今回はキレイ。」

「あぁ、上等なんじゃん?」

「本当に?ありがとう、3人とも!!」

 

ナタル先生は嬉しくなって、3人をまとめて抱きしめました。

 

「えへへ…先生、くすぐったいよ〜☆」

「///」

(…気持ちいい)

 

こうして、初めての授業は無事終了しました。

 

 

勤務終了後、更衣室にて・・・

 

「ナタル、どう?あの3人は…」

 

マリュー園長は後ろで嬉しそうにロッカーに何かを並べているナタル先生に話しかけます。

 

「あぁ、見てください、これ!!」

 

ナタル先生は振り返り、ロッカーを全開にしました。

そこには、色とりどりの鶴が飾ってありました。

 

「まぁ、どうしたの?これ…」

「3人と一緒に作ったんですよ!明日は別のものを作るんです!!」

「そう!!良かったわ!うまくやっているのね☆」

 

マリュー先生はナタル先生の笑顔を見て、嬉しくなりました。

 

 

こうしてコズミック幼稚園は今日も無事に閉園しました。

 

明日は何があるのかな?

 

 

続く

 

 

 

2話のあとがき

 

なんだこれ?と、言いたくなりました。

薬中、もう懐いちゃいましたね。オルガとか、無理矢理ですね。

ここでもナタルは不器用な人になってますが…。

本当は幼稚園の先生がこれじゃいけませんよね?…まあ気にしないようにしましょう…。

そろそろ、ノイマンと薬中を絡ませたいです。幼児に負けるなよ、ノイマン!!

 

 

 

☆おまけ☆

 

「…ザフト組、出ないなぁ…」

「あら、アンディはいいじゃない。私なんて、紹介されてはいるけど、本編ではまだ出ていないのよ?」

「あ〜、ダコスタ君とマードックは無理矢理出た感があるがな。」

「あんな風に中途半端に出されるよりはいいのかしら…?」

「うむ、そうだな。これからを期待しようじゃないか。」

「…そうね。」

 

 

…今回でオールキャラ出たと思ってました。アイシャだけ出てない!!

 

 

 


 

 

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