第3話 運動会(前編)





今日はコズミック幼稚園の、クラス対抗大運動会です。

お庭には大きな旗(マードック製)がたくさん掲げられていました。

 

 

「ノイマンノイマン!!」

 

男性用ロッカールームで着替えをしていたノイマン先生の元に来たのはムウ先生でした。

 

「どうしたんですか、ムウ先生…」

 

息を切らして駆け込んできたムウ先生を、怪訝そうに見たノイマン先生。

ムウ先生は、ニコニコ笑いながらノイマン先生の肩に手を回していました。

 

「見たか?!ナタル先生の体操服姿!!」

「…!!!!!体操服!!」

 

一言でノイマン先生の表情が変わりました。

 

「体操服だよ!!…残念ながらブルマではないがな。」

「そ、それはそうですよ!!…もう外に?」

「あぁ。あの癖のある3人組がさ、ナタル先生引っ張っていったぜ。」

「…はぁ…。ずいぶん懐いているんですね…」

 

ちょっと複雑な気分らしいノイマン先生。(子供相手に大人気ない!!)

 

「…まぁ、とりあえず早く外出なっ!!」

 

ノイマンの気持ちを察したのでしょうか、ムウ先生はポンポンと肩を叩いて去っていきました。

 

 

「キラがいないんだけど…」

「あ、ホントだ。どこ行ったんだろう?」

 

アークエンジェル組の園児達は、決められた集合場所にいましたが、キラの姿が見当たりません。

 

「私、探してくるよ!」

 

いないことに気付いたトールとカズイの言葉を聞き、カガリが飛び出しました。

 

 

・・・その頃キラは・・・

 

(いた!!やっぱりだ…)

 

キラは、デジカメを片手にお庭のど真ん中にいました。

目線の先には、マリュー園長とナタル先生。

 

(園長はTシャツだと胸がますます強調される!!ナタル先生もあの細い腰がなんとも言えず…)

 

ごくりと生唾を飲み込むキラ。こいつは本当に園児なのでしょうか?

 

「おい、キラ!!こんなとこで何やってるんだ?!」

 

そこへ、キラを探していたカガリがやってきました。

 

「!!!!!!か、カガリ…」

「もう集合時間だぞ?みんな探してたぞ!!」

 

まさか、「マリュー園長とナタル先生の体操服姿(2ショットで)を激写しにきた」とは言えず、適当に笑って誤魔化すキラ。

 

「と、トイレに行ってたんだ…」

「…まぁいいや。さ、急ごう!!」

 

カガリは一瞬疑ったようですが、とりあえずキラを引っ張って集合場所に戻りました。

 

(くそっ!!しょうがない…走ってる時の乳揺れを狙うか…)

 

もはや、色んな意味で幼児とは思えない思考をもつ男の子なのでした…。

 

 

「よし!!最初はパン食い競争だぞ!」

「わーい!!アンパンアンパン♪」

 

ドミニオン組のテントで、ナタル先生は種目の確認をしていました。

パン食い競争と聞いたクロトが嬉しそうに飛び跳ねています。

 

「…ジャムパンがいい…」

 

そんなわがままを漏らすシャニ。

 

「あぁ、パンはアンパンだけでなく、色々あるんだぞ。クリームとかチョコとか…もちろんジャムも。」

「!じゃあ頑張る。」

 

なんだか急に嬉しそうになった、単純なシャニです。

 

「走る順番はどうするんだ?」

 

妙に冷静なオルガがナタル先生の服の裾を引っ張って言いました。

 

「そうだな…クロト、1番で行くか?」

「オッケー☆いっちょ行ってきま〜す♪」

 

クロトはナタル先生にウインクしながらスタート地点へと走っていきました。

 

「…クロトの扱いうまいね…」

「…そうだな…」

 

2人はこそこそ言いました。

が、天然のナタル先生が目立ちたがり屋のクロトを1番手にしたのは偶然以外のなにものでもないことには気付きませんでした…。

 

 

 

「1番目の子はこの線に並んでね〜」

 

ジャッキー先生が子供を誘導します。

 

「へへへ〜、楽勝楽勝☆」

 

1番手は、サイ、イザーク、クロトです。

クロトの発言にものすごい勢いで反応したのはイザークでした。

 

「貴様!!真面目にやれ!!」

「はぁ?別にふざけてないけど〜?」

 

クロトは突っかかってきたイザークに対して余裕そうに答えました。

 

「その態度が気に食わん!!」

「うっさいなぁ〜、お前なんて滅・殺!!」

「あ、あの…」

 

横にいたサイはおろおろして、近くでスタート準備をしていたマーチン先生に助けを求めました。

 

「どうしたんだ?…うわ…」

 

服の裾を引っ張るサイの方を向くと、視界に自然と問題児の姿が映って、つい溜息を漏らすマーチン先生。

 

「2人とも!もうスタートだからちゃんとしてなさい!!」

「うるさい!腰抜け!!」

「お前なんて瞬殺!!」

 

哀れマーチン先生。2人に押され、これ以上何も言えなくなってしまいました。

 

(俺、この仕事向いてないのかな?)

(…なんでこの人呼んだんだろ…)

 

サイは諦めて他の先生を呼ぶことにしました。

 

「ナタル先生〜!」

「ん?サイか、どうした?」

 

サイは、クロトの応援をしようと大きな旗を抱えていたナタル先生に助けを求めました。

 

「クロトとイザークが喧嘩して…」

「何!?わかった、すぐ行く!!」

 

ナタル先生は旗を抱えたままダッシュでスタートラインに向かいました。

 

(最初からこうすればよかった…)

 

サイは、まだ落ち込んでいるマーチン先生を見ながら思いました。

 

 

「クロト、イザーク!!何をしている!!」

「ナタル先生!!」

 

背後の声に驚いて振り向くクロト。イザークは顔を真っ赤にしてナタル先生に抗議します。

 

「こいつが楽勝とか言ってるから!!」

「ホントのことだも〜ん!」

 

ナタル先生は溜息のあと、様子を伺っていたジャッキー先生からピストルを奪いました。

 

「クロト!1位取れなかったらパンは没収だ!!」

「え〜〜!!?」

「楽勝なんだろう…?…それと、イザーク…あっちでお母様が熱烈な応援をしているぞ。」

「!!母様!!!」

 

イザークが先生の指差す方を見ると、そこには『Fight!イザーク!!』と書かれた旗を一生懸命振ってるエザリアママがいました。

その姿は、普段のクールなイメージを一瞬で壊すほどのインパクトがありました…。

2人の闘志を燃やしつつ、ピストルを空に掲げるナタル先生。

 

「位置について、よーい、ドン!!」

 

いきなりのスタートに戸惑いつつも、見事なスタートダッシュを決める2人。

 

「アンパーン!!!」

「パンの中身はクリームだぁぁぁぁ!!」

 

2人はなぜか同じパン目掛けてジャンプをしてしまいました。

 

―ごんっ!!―

 

『っ!!』

 

お互い思い切り頭をぶつけ合ってしまいました。

 

「痛い!痛い痛い痛い〜〜〜!!」

「てめえ〜〜!滅殺!!」

 

そして、また喧嘩が始まりました。。。

 

「こらぁぁぁ!!」

 

ナタル先生が叫んで2人の間に入り、引きずって退場させ、端っこで説教を始めました。

その頃・・・

 

「はい、サイ君1位ね〜」

「わ〜…なんか知らないけどやった〜」

 

特に問題なくマイペースにゴールをしたサイの姿がありました。

サイは嬉しそうに、チョコパンをくわえて1位の列に並びました。

それはまるで『ウサギ(×2)とカメ』のようでした…。

 

 

ナタルに絞られたクロトは、しばらく鼻をすすりながらテントでいじけていました。

 

「次は玉入れだ。これは全員で一気にやるんだぞ。」

「玉入れ…好き。」

「オレも〜」

 

シャニとオルガはぶんぶんと腕を回して準備運動を始めました。

 

「…クロト、お前も出るんだぞ!!」

「…やだ…」

 

完全にいじけてしまった模様です。そこで先生はそっとクロトになにかを差し出しました。

 

「ほら、行かないとあげないぞ?」

 

それは、余ったアンパンでした。

 

「…くれるの?」

「玉入れ、頑張るんだぞ?」

 

にっこり笑うと、クロトも笑顔を取り戻しました。

 

 

・・・玉入れ開始・・・

 

玉入れは原則として、女の先生と男の子3人がやることになっています。

アークエンジェルにマリュー先生、ザフトにアイシャ先生、ドミニオンにナタル先生です。

始まった瞬間、ナタル先生は口をあんぐり開けて、呆然とその様子を見ていました…。

 

 

「オラオラオラオラ〜〜〜!!」

 

いつも冷静なオルガが、めちゃくちゃに玉を投げまくっていました。

 

「いって〜〜!シャニ!ボール曲げんな!真っ直ぐ投げろ〜〜!」

 

シャニは、野球選手顔負けの変化球を飛ばしています。

 

「おい!!ちゃんとカゴに入れろ〜!」

 

ナタル先生は慌てて2人に注意をします。

 

「あれ?カゴの玉が…」

 

クロトがカゴから玉を取ろうとすると、いつのまにか空になっています…。

 

「ちっ、玉切れかよぉぉぉ?!」

 

オルガがキレました。

 

「…お前が適当に投げるから…」

 

自分のことは棚に上げて呟くシャニ。

地面には無数の玉があちらこちらに落ちています。

 

「あるじゃねぇか!!オラオラオラぁ!!!」

 

再び一心不乱に玉を投げまくるオルガ。もはや誰にも止めることは出来ないようです…。

 

「キラ・ヤマト、いっきま〜す!!」

 

隣のアークエンジェルチームの枠では、キラが張り切って玉を投げています。

 

「あらあら、上手ね〜。」

 

キラの隣にいたマリュー先生も、負けじと玉を拾おうと屈みます。

その瞬間、キラの目が光りました。『種割れ』です。

キラは素早い動作でマリュー先生の胸をタッチしました。

 

「きゃあ!!」

「あ、すいませ〜ん☆玉と間違えちゃった☆」

 

明らかに確信犯ですが、園児のやったことなので、マリュー先生は怒りません。

 

「こ〜ら!!もう、ダメよ〜?」

「えへへへ…へ?」

 

デレデレしているキラは、背後からただならぬ気配を感じました。

 

「おーおーおー、やるじゃないか、坊主〜!!」

「む、ムウ先生…」

(覚えてろよ…)

 

キラの耳元でポツリと呟くムウ先生。

 

「?あ〜、ムウ先生、ダメでしょ?コート入っちゃ!」

「すまんすまん、もう出るよ。」

 

ムウ先生はすぐに爽やかスマイルを向け、去っていきました。

キラは微妙に怯えていました…。

 

「玉入れは面白いですね、アスラン」

「そうだなぁ…あ、アイシャ先生、これどーぞ。」

「ありがと、アスラン君☆」

「///」

 

ザフトチームのニコル、アスラン、アイシャ先生はほのぼのと、しかし確実に玉を入れていました。

しかし、かなり燃えてる男児が1人…

 

「グゥレイト!!見てるか、ミリアリア!!オレの『グレイト☆バスターアタック』を!!」

「トール〜!!頑張って〜!」

「…ガーン!!!し、シカト!?」

「…頑張るよ〜、ミリィ☆…フン…」

 

トールは正面の枠で、ミリィに手を振りながらちらりとディアッカを見、鼻で笑いました。

 

「くっ、み、ミリアリア!!オレの『グレイト☆バスター…』」

「ダサいわよ、その名前!!」

 

ミリィは熱烈アピールをさらりとかわしました。

ディアッカはショックでいじけてしまいました。

 

「ちょっとディアッカ!真面目にやってくださいよ!!」

 

ニコルが一喝します。

 

「ど〜せ俺はよぉ〜…グチグチ」

「…そんなだから相手にされないんですよ…」

 

ニコルの呟きは、ディアッカに更なるダメージを食らわせました。

 

「終了です。みんな、輪の外に出てください。」

 

司会のパル先生が放送でそう告げると、玉を数えるために3人の先生がカゴを回収します。

 

「おいぃぃ!!勝負はこれからだろぉぉぉぉ!!!??」

 

まだ投げたりないのか、オルガが暴れています。

 

「お、落ち着け!オル…」

 

ナタル先生が抑えようとすると、シャニが地面の玉をとってオルガに向かって投げました。

 

「!!!!?」

 

見事オルガの脳天にヒットし、オルガはしばらく目をシパシパさせていました。

 

「…あれ?オレ何してたんだっけ?」

「何って、パン食い競争してたんじゃん?」

「オルガ、ぶっちぎりの1位…」

「ん?そうだっけ?…まあいいや。」

 

どうやら元に戻ったようです。

シャニは呆然とするナタル先生を突きます。

 

(一度ああなったオルガには、あれくらいやんないとだめ…)

(…覚えておく。)

 

ナタル先生は大きく溜息を吐きました。

 

 

玉入れは、地道に入れたザフトチームが1位という結果で幕を閉じました。

 

 

コズミック大運動会は、まだまだ始まったばかり。

 

次はなにがあるのかな?

 

 

後半へ続く・・・

 

 

 

ちょっと休憩・・・

 

なんだかこれ、書いてて楽しくなってきたので続きます。

今回は、オルガの玉入れが書きたかったので、満足…。

さて、読み返すと某理事がいません。運動会など興味ないのでしょうか?

でも後半ではしっかり活躍してもらいましょう!!

私はエザリアママが好きです。キャリアウーマン。イザーク、ママ似ですよね!

プラチナ美女っていいなぁ〜…。というわけで、こっそり出してみました。

これからさりげなくいろんなキャラを出していけたらいいと思います。

アストレイ3人娘とか、キサカとか…。色々…。

それでは後半で会いましょう…。

 

 

 


 

 

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